あべこべ影のハル 児童文学 完結 最新 短編 ハルは、世界で一番「せいで」という言葉を使うのが得意な男の子でした。 テストの点数が悪ければ「先生の教え方が悪かったせいで」。 友達とケンカをすれば「あいつが先に嫌な顔をしたせいで」。 部屋が散らかっているのは「お母さんが片付けろってうるさく言うせいで」。 ハルがそう言うたびに、ハルの心は少しだけ楽になりました。「自分は悪くない」という、ピカピカの盾を持っているような気分だったのです。 ある日の帰り道、ハルは水たまりで転んでズボンを汚してしまいました。 “あべこべ影のハル” への5件のフィードバック 匿名 より: 05/11/2025 20:11 「ちぇっ、道がボコボコしているせいで!」 そう叫んだ瞬間、地面から真っ黒な、ハルそっくりの形をした影がムクムクと起き上がりました。 「……せいで、せいで、お前のせいで」 影はハルの言葉を真似して喋りだしました。ハルは驚きましたが、もっと驚いたのは、影がハルの代わりに「言い訳の糸」を吐き出したことです。 返信 匿名 より: 21/12/2025 11:49 ハルが言い訳をするたびに、影の口からベタベタした黒い糸が出てきて、ハルの手や足に巻き付きました。 「宿題を忘れたのは、目覚まし時計が鳴らなかったせいで!」 ハルが言うと、糸はハルの右手をぐるぐる巻きにして、ランドセルに届かなくさせました。 「忘れ物をしたのは、お母さんが入れなかったせいで!」 ハルが言うと、糸はハルの足を縛り、学校へ行く道を塞ぎました。 返信 匿名 より: 08/02/2026 13:12 「なんだよこれ! ほどいてよ!」ハルは怒りました。 すると影は、ハルの声を真似して笑いました。 「無理だよ。これは『自分では何もできない人の糸』なんだ。誰かのせいにするってことはね、自分の手足の動かし方を、その人に上げちゃうってことなんだよ」 ハルはハッとしました。 「お母さんのせい」にしている間は、自分ではカバンの中身を確認できません。 「時計のせい」にしている間は、自分では起きることができません。 「あいつのせい」にしている間は、自分では仲直りの魔法を使えません。 ハルが誰かのせいにすればするほど、ハルの手足は糸で縛られ、ハルは自分一人では指一本動かせない、ただの人形みたいになっていくのでした。 「嫌だ! 僕は人形じゃない!」 ハルは必死でもがきました。でも、糸は「せいで」と言うたびに増えていきます。 返信 匿名 より: 08/03/2026 19:44 ハルは苦しくて、怖くて、ぎゅっと目を閉じました。 そして、喉まで出かかった「影が邪魔したせいで……」という言葉を、ぐっと飲み込みました。 代わりに、震える声でこう言ってみました。 「……僕が、足元を見ていなかったからだ」 返信 匿名 より: 20/03/2026 22:13 その瞬間、足首に巻き付いていた糸が、スッと消えました。 「僕が、確認するのを忘れたからだ」 言うたびに、腕の糸がほどけていきます。 ハルは気づきました。 「自分のせい」と認めるのは、自分を責めることではなくて、「自分の手足を取り戻すこと」なんだ。 誰かのせいにしているうちは、自分では何も変えられない。でも、「自分のこと」にすれば、次はこうしよう、ああしようと、自分で決めることができる。 ハルが全部の糸をほどき終わったとき、真っ黒な影は消えていました。 汚れたズボンはそのままでしたが、ハルの手足は、さっきよりもずっと力強く、自由に動くようになっていました。 ハルは汚れた膝をパッパと払って、自分の足で、しっかりと家に向かって歩き出しました。 返信 続きを書く コメントをキャンセルコメント ※ 名前 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。 上に表示された文字を入力してください。 関連記事 魔法のインクと未来の顔 影をなくしたネコ 三つの止まり木 コドモとオトナ 透明な針を持つ小さな騎士 言葉を食べる猫
「ちぇっ、道がボコボコしているせいで!」 そう叫んだ瞬間、地面から真っ黒な、ハルそっくりの形をした影がムクムクと起き上がりました。
「……せいで、せいで、お前のせいで」
影はハルの言葉を真似して喋りだしました。ハルは驚きましたが、もっと驚いたのは、影がハルの代わりに「言い訳の糸」を吐き出したことです。
ハルが言い訳をするたびに、影の口からベタベタした黒い糸が出てきて、ハルの手や足に巻き付きました。
「宿題を忘れたのは、目覚まし時計が鳴らなかったせいで!」 ハルが言うと、糸はハルの右手をぐるぐる巻きにして、ランドセルに届かなくさせました。
「忘れ物をしたのは、お母さんが入れなかったせいで!」 ハルが言うと、糸はハルの足を縛り、学校へ行く道を塞ぎました。
「なんだよこれ! ほどいてよ!」ハルは怒りました。 すると影は、ハルの声を真似して笑いました。 「無理だよ。これは『自分では何もできない人の糸』なんだ。誰かのせいにするってことはね、自分の手足の動かし方を、その人に上げちゃうってことなんだよ」
ハルはハッとしました。 「お母さんのせい」にしている間は、自分ではカバンの中身を確認できません。 「時計のせい」にしている間は、自分では起きることができません。 「あいつのせい」にしている間は、自分では仲直りの魔法を使えません。
ハルが誰かのせいにすればするほど、ハルの手足は糸で縛られ、ハルは自分一人では指一本動かせない、ただの人形みたいになっていくのでした。
「嫌だ! 僕は人形じゃない!」 ハルは必死でもがきました。でも、糸は「せいで」と言うたびに増えていきます。
ハルは苦しくて、怖くて、ぎゅっと目を閉じました。 そして、喉まで出かかった「影が邪魔したせいで……」という言葉を、ぐっと飲み込みました。
代わりに、震える声でこう言ってみました。 「……僕が、足元を見ていなかったからだ」
その瞬間、足首に巻き付いていた糸が、スッと消えました。 「僕が、確認するのを忘れたからだ」 言うたびに、腕の糸がほどけていきます。
ハルは気づきました。 「自分のせい」と認めるのは、自分を責めることではなくて、「自分の手足を取り戻すこと」なんだ。 誰かのせいにしているうちは、自分では何も変えられない。でも、「自分のこと」にすれば、次はこうしよう、ああしようと、自分で決めることができる。
ハルが全部の糸をほどき終わったとき、真っ黒な影は消えていました。 汚れたズボンはそのままでしたが、ハルの手足は、さっきよりもずっと力強く、自由に動くようになっていました。
ハルは汚れた膝をパッパと払って、自分の足で、しっかりと家に向かって歩き出しました。