時間が止まる瞬間

凍てつくような1月の朝。高校2年生の冬、通学電車のドアが開くたびに流れ込む冷気は、眠気を吹き飛ばすには十分すぎるほど尖っていた。

いつもの車両、いつものドア横。結城(ゆうき)は詰め襟のカラーが喉に食い込む感触を嫌い、少しだけ顎を引いて外を眺めていた。駅に到着し、乗客が入れ替わる。その瞬間だった。

「あっ……」

小さな声と同時に、右肩に柔らかな重みが走る。
降りようとする人の流れに押された少女が、結城のすぐ隣でバランスを崩したのだ。
慌てて体勢を立て直そうとした彼女だが、なぜかその場から離れられない。

「すみません、あの、これ……」

見上げると、そこには同じ学校の制服を着た女子生徒がいた。彼女の真っ白なニットのマフラーが、あろうことか結城の学生服のカラー(プラスチックの留め具部分)に、がっちりと絡みついていた。

「あ、ごめん。動かないで」

結城は咄嗟に言った。無理に離れようとすれば、彼女の首が絞まるか、マフラーの編み目が台無しになってしまう。
朝のラッシュ。周囲の視線を遮るように結城が少し背を丸めると、二人の距離は必然的に、吐息が届くほど近くなった。

「……ごめんなさい、恥ずかしい……」
「いいよ、別に。すぐ外れるから」

指先がかじかんで、うまく力が入りそうにない。結城は手袋を口でくわえて脱ぎ、冷たい指で慎重に白い糸をカラーの角から外していく。

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