重たい靴のトト 児童文学 完結 最新 特集 短編 ある日、トトの靴が突然、鉄でできているみたいに重くなりました。 玄関には、学校へ行くための教科書が詰まったカバンが待っています。机の上には、真っ白な宿題が広げられています。窓の向こうでは、未来という名の遠い山が「早くおいで」と光っています。 でも、トトは一歩も動けません。 「どうしたの? 頑張らないと、立派な大人になれないわよ」とお母さんが言いました。 「今頑張れば、後で楽になるんだぞ」とお父さんが言いました。 “重たい靴のトト” への6件のフィードバック 匿名 より: 16/12/2025 09:10 トトは分かっていました。全部、その通りだと。 でも、分かれば分かるほど、靴はどんどん重くなり、ついには床にめり込んで、トトの体はびくともしなくなりました。 そこへ、ひょいと窓から「ノラ」という名の野良猫が飛び込んできました。 ノラは、動けないトトの靴の先を、チョイと突っついて言いました。 「あんた、その重たい靴、『明日の分』まで履き込んでるね?」 返信 匿名 より: 05/01/2026 16:39 トトは驚いて聞き返しました。 「明日の分……?」 「そうさ」ノラはあくびをして続けました。 「あんたが今履いているのは、今日の靴じゃない。明日やらなきゃいけないこと、来年頑張らなきゃいけないこと、いつか立派にならなきゃいけないこと……そんな『まだ来ない日の重み』を全部、今の靴に詰め込んでるんだ。そんなの、象だって一歩も歩けないよ」 トトは自分の足元をじっと見ました。 確かに、宿題の一文字目を書く前から、「これが終わらなかったら先生に怒られる」「テストで悪い点を取る」「将来、なりたいものになれない」という不安が、泥のように靴にまとわりついていました。 返信 匿名 より: 19/01/2026 22:06 「いいかい」ノラはしっぽを振りました。 「あんたの仕事は、遠くの山に登ることじゃない。ただ、膝を一度だけ、ひょいと持ち上げること。それだけだよ。 持ち上げた足がどこに着地するかは、着地してから考えればいいのさ」 トトは、遠くの山を見るのをやめました。 カバンの中の教科書のことも、明日の教室のことも忘れました。 返信 匿名 より: 03/02/2026 23:41 ただ、「今、この瞬間、右足の膝を3センチだけ上げる」ことだけに集中しました。 ……ひょい。 すると、どうでしょう。 あんなに重かった靴が、ほんの少しだけ軽くなりました。 返信 匿名 より: 01/03/2026 13:24 トトは一歩だけ踏み出しました。 それは学校へ向かう一歩でも、未来へ向かう一歩でもありませんでした。 ただ、「動けた」というだけの一歩です。 でも、その小さな一歩を刻んだとき、トトの心に不思議な風が吹きました。 「全部やらなくていい。とりあえず、鉛筆のキャップを外すだけ。とりあえず、パソコンの電源を入れるだけ。とりあえず、一分だけ外の空気を吸うだけ」 返信 匿名 より: 20/03/2026 08:07 ノラは窓枠から外へ飛び出しながら、最後にこう言いました。 「頑張れない時はね、頑張る先が長すぎる証拠だよ。今、この1秒。それだけでいいんだ」 トトは机に向かいました。 宿題はまだ終わっていません。仕事も山積みです。 でも、トトはもう、重たい鉄の靴は履いていませんでした。 返信 続きを書く コメントをキャンセルコメント ※ 名前 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。 上に表示された文字を入力してください。 関連記事 タロウとポチ 白いキャップの少女 透明な針を持つ小さな騎士 あべこべ影のハル 言葉を食べる猫 コドモとオトナ
トトは分かっていました。全部、その通りだと。 でも、分かれば分かるほど、靴はどんどん重くなり、ついには床にめり込んで、トトの体はびくともしなくなりました。
そこへ、ひょいと窓から「ノラ」という名の野良猫が飛び込んできました。 ノラは、動けないトトの靴の先を、チョイと突っついて言いました。
「あんた、その重たい靴、『明日の分』まで履き込んでるね?」
トトは驚いて聞き返しました。 「明日の分……?」
「そうさ」ノラはあくびをして続けました。 「あんたが今履いているのは、今日の靴じゃない。明日やらなきゃいけないこと、来年頑張らなきゃいけないこと、いつか立派にならなきゃいけないこと……そんな『まだ来ない日の重み』を全部、今の靴に詰め込んでるんだ。そんなの、象だって一歩も歩けないよ」
トトは自分の足元をじっと見ました。 確かに、宿題の一文字目を書く前から、「これが終わらなかったら先生に怒られる」「テストで悪い点を取る」「将来、なりたいものになれない」という不安が、泥のように靴にまとわりついていました。
「いいかい」ノラはしっぽを振りました。 「あんたの仕事は、遠くの山に登ることじゃない。ただ、膝を一度だけ、ひょいと持ち上げること。それだけだよ。 持ち上げた足がどこに着地するかは、着地してから考えればいいのさ」
トトは、遠くの山を見るのをやめました。 カバンの中の教科書のことも、明日の教室のことも忘れました。
ただ、「今、この瞬間、右足の膝を3センチだけ上げる」ことだけに集中しました。
……ひょい。
すると、どうでしょう。 あんなに重かった靴が、ほんの少しだけ軽くなりました。
トトは一歩だけ踏み出しました。 それは学校へ向かう一歩でも、未来へ向かう一歩でもありませんでした。 ただ、「動けた」というだけの一歩です。
でも、その小さな一歩を刻んだとき、トトの心に不思議な風が吹きました。 「全部やらなくていい。とりあえず、鉛筆のキャップを外すだけ。とりあえず、パソコンの電源を入れるだけ。とりあえず、一分だけ外の空気を吸うだけ」
ノラは窓枠から外へ飛び出しながら、最後にこう言いました。
「頑張れない時はね、頑張る先が長すぎる証拠だよ。今、この1秒。それだけでいいんだ」
トトは机に向かいました。 宿題はまだ終わっていません。仕事も山積みです。 でも、トトはもう、重たい鉄の靴は履いていませんでした。