透明な針を持つ小さな騎士

少年・レンは、自称「正義の騎士」でした。 レンの頭は、まるで磨き上げられた鏡のように鋭く、誰かが間違いを犯すと、すぐにそれを見つけることができました。

「それはルール違反だよ」 「君が言っていることは、論理的におかしいよ」 「僕の言う通りにすれば、失敗しなかったのに」

レンの言葉は、いつだって「正しい」ものでした。一分の狂いもない正論です。 でも、レンが正しさを証明するたびに、友達は黙り込み、一人、また一人とレンのそばから離れていきました。

ある日、レンが森を歩いていると、不思議な仕立て屋の老人に会いました。老人はレンを見て、悲しそうに言いました。

“透明な針を持つ小さな騎士” への8件のフィードバック

  1. 匿名 より:

    「おや、小さな騎士様。あんたの口からは、『透明な針』が止まらなく溢れているね」

    レンは不思議に思って聞き返しました。 「針? 僕が言っているのは、本当のこと(正論)だけだよ。間違ったことは一度も言っていない」

    老人は、一枚の大きな布をレンに見せました。 「見てごらん。ここに、転んで泥だらけになった子が描かれている。あんたなら、この子に何て言う?」

  2. 匿名 より:

    レンは即座に答えました。 「『前を見て歩かないからだよ。』って言うよ。それが正しいアドバイスだからね」

    レンがそう口にした瞬間、老人の持つ布に、シュッと一筋の亀裂が入りました。レンの口から飛び出した「透明な針」が、布を切り裂いたのです。

  3. 匿名 より:

    「いいかい、小さな騎士様」老人は静かに言いました。 「あんたが言ったことは、たしかに『正論』だ。嘘じゃない、正しい理屈だ。でも、それはこの子の傷を治す『正解』じゃないんだよ」

    「正論と正解は、違うの?」レンは戸惑いました。

  4. 匿名 より:

    「ああ、全然違う。正論は、相手を突き放すための『剣』だ。でも、正解は、相手と繋がるための『糸』なんだ。 泥だらけの子に必要なのは、注意されることじゃなくて、立ち上がるための手だろ? 『痛かったね』という一言や、『次は一緒に気をつけよう』という誘いだ。 正しいことを言っても、相手の心が壊れてしまったら、それは世界にとっての正解じゃないんだよ」

  5. 匿名 より:

    レンは、自分がこれまで友達に放ってきた言葉を思い出しました。 「正しい理由」を武器にして、相手を追い詰め、言い負かしてきた自分。 レンの正論という名の針は、友達の心という柔らかい布を、ズタズタに引き裂いてきたのでした。

    「……じゃあ、僕はどうすればいいの?」

  6. 匿名 より:

    老人は、レンの口元に手をかざしました。 「次に何かを言いたくなったら、その言葉が『相手を刺す針』か、それとも『相手を包む糸』か、一秒だけ考えてごらん。 正しさは、優しさと組み合わさって初めて、本当の『正解』になるんだよ」

  7. 匿名 より:

    その帰り道、レンは泣いている女の子に会いました。彼女は大事な花瓶を割ってしまったようでした。 レンの頭には、すぐに「片付けを怠けたからだ」「不注意だ」という正論が浮かんできました。

    でも、レンはその言葉を飲み込みました。 そして、針を糸に変えて、こう言いました。

  8. 匿名 より:

    「びっくりしたね。一緒に片付けようか」

    その瞬間、レンの胸の奥で、今まで感じたことのない温かさが広がりました。 女の子は顔を上げ、小さく「ありがとう」と微笑みました。

    レンは気づきました。 「僕が正しいこと」を証明するよりも、「二人で笑えること」の方が、ずっと難しいけれど、ずっと素敵な『正解』なんだということに。

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